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とっちら

好きなことを取っ散らかします。

踊り場vol.3がすごいよかったから読んでほしい

感想文

美術雑誌『踊り場』vol.3が昨日届いた。朝起きて読んだ。

これは野口翔平さん、小林舞衣さん、廣谷妃夏さんによって作られている雑誌で、12月28日に発行されたもの。テーマは「ちょっとそこまで、ずっと遠くへ」。踊り場GARAGE STOREで買えます、600円ぽっきり。

Twitterで偶然制作者の1人を知り、vol.2販売後に関連イベントに出向き、たくさんの関係者をめちゃくちゃ好きになってしまって帰り、今回は事前に予約させていただいてたんですが、めちゃくちゃよかった。めちゃくちゃよかった。

 

今号の内容は、ゴムホースの写真を取っている中島由佳さん(https://www.instagram.com/nakasmith/)へのインタビュー、生活に向かい合う笹野井ももさんの自宅展の様子、物々交換所というシステムの設置者酒井貴史さんへのインタビュー、ものと思いについて話す京増千晶さんの「植物と標本のあるくらし」、郷田彩巴さんの使い捨てカメラを用いた試み(たくらみ?)、そしてことはあいこさんの「染め」のレシピと満月の記録@インドネシア。です。

全部よかった、わたしは以前実家に戻っていたときに偶然ホースの写真を撮っていたし、人の生活を見るのが好きだ。まさかボルトがあらわれるとは。酒井さんの「やっていて一番楽しい仕事ってタダ働きだったりするんだよね」という発言には実感をともなった共感を感じるし(文章の流れの中でこの発言についてぜひ読んでほしい)、古代からある植物はすごくかっこよく見えた。他人の写真を撮る理由かもしれないものを教えてもらうことは嬉しいし、まさか絹の染め方を知ることになるなんて思ってなかった。これらはこの雑誌を開かなければ得られなかったもので、それが全部嬉しい。

今号がすごくいいなと思ったのは、前回以上に「よくわかる」ようになっていたことだ。それはもちろん、わたしにとって「よくわかる」だから、誰かにとっては「わかりづらい」である可能性はあるのだが、美術的な文脈をほぼ一切もたないわたしでも理解できるような注釈が入っていたのはとても嬉しかった。言っていることがわかる(何を意味しているのかがわかる)のは読んでいてとても楽しい。なんだか親近感がわいた。どうしても「美術」というものに距離を感じてしまうこともあるのだが、この雑誌には自分と共通する言語を感じた。これは言葉が単純だとか、そういうことではない。しかし言葉が素直だなというのは強く感じた。インタビュー上手だな……とも思う。

それで、いやあ〜全部おもしろかったなあとかのんきに思いながら読んでいたら、ことはあいこさんの最終ページにすごい言葉があって、うわっと思ったときにはもう涙がこぼれていた。それはこういうものだ。

“Buddhist and Shintoist celebrate Christmas Day at Balinese Hindu temple in the biggest Muslim country.

Is this what 'PEACE' is ?  Safe trip to Japan, Aiko! ”

仏教徒神道の私たちが、クリスマスに、ヒンドゥー寺院で、お祈りをする。そしてここは、世界で最も大きなイスラムの国である!

これを平和と言わず、なんと呼ぶ? 愛子の日本への旅に幸あれ。」

 なにを、一体なにをどうしたらこんな言葉が出るんだ。その澄みきった言葉を発するのはどんな人なんだ。めちゃくちゃ感動した。平和という言葉に心を動かされたことなど今まで一度もなかった。こんな形で最後に心が揺さぶられるなんて……。

わたしが今(一応)専門としているのは宗教社会学で、どうやったら違う考えの人々が、「無理をせず」お互いにわかりあえるのか?というのがどうにもよくわからなかった。信仰が違うというのは見ている世界が違うということでもありうる。そんな人々がどうやって一緒に生きるのか? 考えた結果、一時的に至ったのは、「とりあえず宗教的な思想の要素などを全部抜いて、世俗的(宗教的の反対語、世の中の「普通」)な形で、そのメリットだけを得られるようにすればいいんじゃないか」というものだった。そうしてしまえば、そこの部分だけは世界観が一致するはず、その領域では信仰が関係なくなるはず。

だけど、この言葉を読んで、ああそっちじゃなかったんだ、全部を包み受容するやり方を実践できる人がいるんだということを感じて、ものすごい希望になった。ほんとに。信仰をもたない人が何かを受容するということも大変だけど、信仰をもっている人がほかの信仰を受容するということは、めちゃくちゃ難しいときがあると思う。だからそういう、理念としては何度も語られてきたであろうことを、こんなに自然な形でやってのけることにびっくりして、嬉しくて、ありがたいと思った。

これだけ感じるものがあったからこそ、この文をブログで引用するか悩んだ。だってこれはきっと大切な言葉だ。これをことはあいこさんの友人が発して、ことはあいこさんが書いて、踊り場の編集部の方が本にしなければ目にすることがなかった言葉と気持ちだ。スッと、こんな簡単にわたしがインターネット上に流すものではないと思う。大体の作品についてこのようなことを思っているけど、とくにこれについては強くそう思った。

迷ってしまったので踊り場編集部の方に相談したら、ことはあいこさんにも聞いていただけて、引用してもオッケーとのことだったので、こうして書くことにしました。

 

そういうわけで、わたしは最後にぐわっともっていかれちゃったんですが、全体的なデザインもおもしろいし(とくに写真の配置がいい)、文章にうん?と困るとこがなかったし、本の綴じ方もかわいいし(今回はミシン製本のものがある)、質的調査のようなフシもあるし、文化人類学的要素もある、みんな見てよ。という気持ちです。植物好きな人もカメラが好きな人も、あるものとそこに込められた意味が好きな人も、いるでしょ!読んで!

もう1回載せるけど、ここで買えますんで。どうぞよろしくお願いいたします!

odoriba-mag.com