村上春樹のエッセイを初めて読んだ。『やがて哀しき外国語』
2ヶ月ほど前に、Twitterで「翻訳をやってる人のエッセイを読んでみたい!」と言っていたところおすすめしていただいた本のひとつ。
💓日英翻訳もされる村上春樹さんの「やがて哀しき外国語」というエッセイ、1980年代のアメリカでの作家活動について気軽に読めお勧めです https://t.co/Pin8RATk5h https://t.co/aMrc0z22K9
— akari (@lumo_23) 2017年5月8日
1991年から2年にわたるプリンストン在住期間のことを書いた、1992-1993年の連載が文庫本になったもの。
村上春樹、小説はなんかキザでクサいシーンが多い印象で、「ッカーー!よくこんなこと言うわ!」みたいな気持ちになってしまい数ページで断念することが多かったのだが、以前短編小説を読んでみたらそれほど「ッカー!!!」にならずにすんだのもあって、さてエッセイだとどうなんだろう……と思い手に取った。
いざ読んでみると、まあとても面白い。わたしは歴史的な流れをつかむのがとても苦手なのだが、村上の視点・語り口に助けられて、25年ほど前のアメリカの様子がよく伝わる。「アメリカ」と一概にくくらずに、それぞれの地域の様子を書いているのもいい。わたしは村上に対して、都会的イメージというか、なんかハイカルチャーなものを好みそうなイメージを長編小説から勝手にもっていたのだが、むしろ堅苦しいものは苦手そうな様子もあり、(あっこちらの勘違いでしたね……)と思いました。
しかし、何について書くにしても、こうポーンと放った感じがあるというか、「自分の属する社会」みたいなものへのこだわりがあまり感じられない文章で、おおらか……おおらかでいいんだろうか。「へえ、そんなこともあるもんなんだなあ〜」みたいなスタンスを感じる。心持ちに余裕があるのだ。とぼけたような感じのところもあり、なんか面白い人なんだなと思った。
時代の雰囲気というべきものを、こういうふうに本から感じることができたのは初めてだったので、読んでみてよかったなと思っている。また、最後に載っている「『やがて哀しき外国語』のためのあとがき」という文章が非常によくて、先に述べたような村上のフワッと感が、どのような視点によって生まれているのかを理解する手がかりになっていると思う。
『村上さんのところ』とかもちょっと読んでみたくなったな。おすすめいただいてありがとうございました! 次は他の方に教えてもらった、岸本佐知子さんのエッセイを読んでみようと思う。